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横浜地方裁判所川崎支部 昭和37年(ワ)121号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕そこで次に、本件各物件《注、物件目録記載の物件》が借家法第五条にいう造作にあたるかどうかについて検討する。

<証拠>を綜合すると、本件賃貸借契約における使用目的は、原告が喫茶バーを営むための店舗として使用することにあつたが、右契約当時、本件建物は鉄筋コンクリート造の竣工直後のものであつて、本件室には造作は全然施されていず、床天井はもとより周壁も一部を除き壁の上塗りさえもされていない、裸のコンクリート造の儘の状況にあつたため、前出営業の店舗として使用するためにはこれに改造、造作等を施さねばならず、そこで原告は被告の同意を得てかかる店舗として使用するのに適するように本件各物件を附加したものであること、本件建物は鉄筋コンクリート造四階建のビルで、繁華街の一角を占め、附近一帯は飲食店や商店が多く、これら営業を営むための立地条件に恵まれているところ、被告はもともと本件建物の各室を店舗として他に賃貸するため建築したものであるが、就中本件室はその地階にあつて、構造上も喫茶バー等の飲食業を営む店舗として使用するのに最も適し、被告においても本件室をかかる営業用の店舗として他に賃貸することを予定して造つたものであり、そして本件室内の造作等一切は賃借人の意向に任せ、賃借人にこれをさせるため、自からは何の造作を施さない儘の状態で原告に賃貸するに至つたことを認めることができ、他に右認定を覆えすに足りる確かな証拠はない。ところで借家法第五条にいう造作とは、建物に附加された物件で賃借人の所有に属し、且つ建物の使用に客観的な便益をもたらすものをいうから、建物に附着することによつて、これを分離復旧させることが事実上または社会経済上著しく不利益をもたらし、一般取引社会の実情からみても、建物から独立して所有権の目的物となり得ず、建物の構成部分として建物所有権に吸収さるべきものは、有益費償還請求権によつてその費用の回収を図るべく、右造作買取請求権の対象とならないものであり、また仮令附加された物件が建物所有権から独立して賃借人の所有に属すべきものであつても、該物件が建物使用に客観的便益をもたらさず、専ら賃借人だけの特殊目的に使用するために特に附加したに過ぎないものであれば、右造作に含まれず、従つて例えば普通住居用の家屋賃貸借の如き場合に、特定の営業にしか使用できない店舗設備を附加しても、かかる設備は造作ということはできないけれども、然し使用目的を特定の営業用の店舗として賃貸借された場合において、もともとその建物が賃店舗として当該営業に使用されることを予定して建てられ、前もその構造および地理的条件等からみても該営業の店舗として使用されるのに適し、かかる営業用の借家として或る程度一般的な需要に対応し得る場合には、右営業に使用する目的で附加した物件であつても、それがかかる営業用の設備として通用性を具えているものであれば、かような設備は賃貸建物の一般的な客観的利用価値を増加させるものとして、なお造作に含まれるものとみて妨げないものと解する。

以上の観点に立ち、且つ前記認定の事実を斟酌して考えれば、本件各物件はすべて右造作に属するものと認められる。もつとも本件(1)、(2)、(3)、(8)、(9)、(13)、(14)の各物件につき、成立に争いのない甲第九号証の一ないし一九および原告本人尋問の結果(第二回)によると、右各物件は、その性質、形態等からして、本件室から独立して所有権の目的となり得るものとするには疑問の余地が残らないわけではないが、然し前記認定のように、本件室は鉄筋コンクリート造であつて、周壁、床天井等殆んどが上塗りさえもされていない裸のコンクリート造の他の状態で賃貸借せられ、取引の対象とされている事情を考慮に入れると右各物件は、事実上も取引上も、なお建物から独立性をものものと認められるから、これらをもつて造作とするのに妨げないものというべきである。更にまた、右各証拠によると、本件各物件中、とりわけ(4)、(10)、(12)の各物件については、前記飲食店営業に必要な設備とはいえるが、建物に附加された設備とし且又それが、建物使用に客観的便宜をもたらすものというには相当考慮の余地があり、その余の諸物件についても程度の差これあれ、同様の問題がないわけではない。然しこれらの各物件も、その性質、形態等からして、前記の如き飲食店営業用の設備としては一般的な適用性をもつものと認められ、そして前記認定のとおり、被告はもともと本件室を貸店舗としてかかる営業に使用されるのを予定して造つたものであつて、その構造および地理的条件からしても右営業の店舗として使用されるのに適し、而も<証拠>によると本件室は、本件賃貸借終了後現在も、喫茶バーの店舗として他に賃貸使用されていて、本件各物件も併せてその利用に供されていることが明らかであり、この事実に本件室の構造、場所的条件等を照らし合せてみると、本件室が前記のような営業用の貸店舗として一般的な需要を期待し得るものであることは容易に推認することができるところであるから、以上の諸事情を考慮すると、右各物件は本件室に附施された設備として一般的な客観的利用価値を増加させるものと認められるから、これを造作とみて妨げないものといわねばならない。(田辺康次)

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